初めて就職先を探すとき、求人票を見ても何を基準に選べばいいのか分からない人も多いと思います。
私自身、初めて社会人になるときはそうでした。
当時の私は、求人票などに書かれている給料をそのまま受け取れると思っていましたし、ボーナスも2か月分くらいはもらえるものだと思っていました。
しかし、実際に働いて給料を受け取ってみると違いました。
私の場合、税金や社会保険料などが引かれ、感覚としては額面より2割ほど少ない金額になりました。
期待していたボーナスも、実際には10万円程度。
さらに毎月の支払いを済ませると、手元には5万円も残りません。
「これでは一人暮らしは難しいな」
そう感じて、私は実家を出るまでに時間がかかりました。
実家暮らしだったことで多少は融通が利いたので、その間に貯金もしていましたが、生活していくには思っていた以上にお金が必要です。その後の20代、30代も転職や資格取得などに取り組んできました。
だからこそ、これから初めて就職する高校生や大学生、専門学生には、求人票に書かれている給料だけを見るのではなく、
「この会社に就職したら、自分はどんな生活ができるのか?」
まで一度考えてみてほしいと思っています。

特に、就職を機に一人暮らしをしたい人や県外への就職を考えている人は、自分の場合はいくら必要なのか実際に計算してみてください。
求人票の「月給=使えるお金」ではない
まず私が勘違いしていたのが、求人票に書かれている月給(基本給+手当て)です。
たとえば、
月給20万円
と書かれていたら、20万円が自分の銀行口座に入って自由に使えると思っていました。
実際にはそうではありません。
会社員の場合、給与から健康保険や厚生年金、雇用保険、所得税などが差し引かれます。住民税も関係してきます。
そこで、これから社会人になる人が生活を考える最初の目安として、
「額面から20%くらい引かれる」
と考えて、一度ざっくり計算してみると分かりやすいと思います。
たとえば、
月給20万円 × 0.8 = 手取り16万円程度
という考え方です。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)も、社会保険料や税金を差し引いた手取りについて、給与の8割前後になるケースが一般的と説明しています。
ただし、20%はあくまで簡単に生活費を考えるための目安です。
実際に差し引かれる金額は、給与額や加入している社会保険、税金などによって変わります。
「必ず額面の20%が引かれる」という意味ではありません。
大切なのは、求人票の月給だけを見て生活を想像しないことです。
「月給○万円」の中身も確認してみよう
もう一つ見てほしいのが、基本給と手当です。
求人票に「月給25万円」と書かれていても、その25万円すべてが基本給とは限りません。
基本給にさまざまな手当を加えて25万円になっている場合もあります。
さらに、固定残業代が含まれている求人もあります。
「月給が高いからこちらの会社にしよう」
と数字だけで判断する前に、
- 基本給はいくらなのか
- どんな手当が含まれているのか
- 固定残業代は含まれているのか
- 通勤手当や住宅手当はあるのか
など、一度中身を確認してみてください。
ボーナス「年2回」=給料2か月分ではない
これも私は勘違いしていました。
私は社会人になる前、ボーナスは給料の2か月分くらいもらえるものだと思っていました。
ところが、実際に勤めた会社では10万円程度でした。
求人票に、
「賞与あり・年2回」
と書かれていても、「給料2か月分を年2回もらえる」という意味ではありません。
何か月分なのか、過去にはどの程度の支給実績があったのか、どの金額を基準に計算するのか。
気になる会社なら、回数だけではなく中身まで確認してみてください。
また、賞与からも税金や社会保険料などが差し引かれます。
「ボーナスがあるから何とかなる」と最初から生活費に組み込んでしまうより、まず毎月の給料だけでどこまで生活できるのかを考えておく方がいいと思います。
年間休日110日と120日ではどのくらい違う?
給料と一緒に見てほしいのが、年間休日です。
求人票を見ると、
「年間休日110日」
「年間休日120日」
「週休2日制」
「完全週休2日制」
など、いろいろな書き方があります。
私もそうでしたが、初めて求人票を見る学生にとっては、これだけ見ても実際にどのくらい休めるのかイメージしにくいと思います。
そこで、年間休日110日と120日を単純に1週間あたりに換算してみます。
| 表記 | 年間の休日 | 週平均に換算 | 年間の勤務日目安 |
| 年間休日110日 | 110日 | 約2.12日/週 | 約255日 |
| 年間休日120日 | 120日 | 約2.31日/週 | 約245日 |
| 完全週休2日制 | 毎週2日の休日 | 2日/週 | 祝日などの扱いで変わる |
| 週休2日制 | 毎週2日とは限らない | 単純計算できない | 会社の勤務カレンダーによる |
※年間休日110日・120日の「週平均」は、年間休日÷約52週で単純計算した目安です。実際の休日の配置を示すものではありません。
年間休日110日と120日では、1年間で10日の差があります。
月平均にすると約0.8日なので、イメージとしては毎月1日近く休みが違うことになります。
「10日くらいなら、それほど変わらないのでは?」
と思うかもしれません。
でも、同じ条件で10年間働いたと単純計算すれば100日の差です。
給料だけでなく、こうした休日の違いも長く働くことを考えると確認しておきたいところです。
「週休2日制」と「完全週休2日制」は同じではない
ここは求人票を見るときに特に注意してほしいところです。
「週休2日制」と「完全週休2日制」は同じ意味ではありません。
完全週休2日制は、毎週2日の休日がある働き方です。
一方、週休2日制は「毎週必ず2日休める」という意味ではありません。
そのため、
「週休2日制と書いてあるから毎週土日休みだ」
と思い込まないようにしてください。
さらに、完全週休2日制=土日休みとも限りません。
たとえばシフト勤務なら、水曜日と日曜日など、毎週2日の休日はあっても土日休みではない場合があります。
求人票を見るときは、
- 年間休日は何日あるのか
- 週休2日制なのか完全週休2日制なのか
- 土日が休みなのか
- 祝日は休みなのか
- シフト勤務なのか
- 年末年始や夏季休暇などはどうなっているのか
まで確認してみてください。
年間休日数と「いつ休めるか」の両方を見る
ここで大切なのは、
年間休日数=1年間でどのくらい休めるか
休日の曜日・週休制度=どのように休めるか
と分けて考えることです。
たとえば年間休日120日あったとしても、自分が希望している土日休みとは限りません。
反対に、年間休日110日の会社でも、その休日の配置が自分の生活に合っている可能性もあります。
だから求人票を見るときは、
「年間休日○日だから多い・少ない」だけで判断せず、その休みがどのように設定されているのかまで確認する。
ここまで見て初めて、自分が実際に働いたときの生活をイメージしやすくなると思います。
給料が少し高くても休日が少ない会社もあれば、給料だけを見ると低くても、休日や福利厚生などを含めて考えると自分には合っている会社もあります。
給料だけでは、働く条件のすべては分かりません。
有給休暇と年間休日は別に考えよう
有給休暇についても知っておいてほしいところです。
一般的な労働者の場合、入社から6か月継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤すると、10日の年次有給休暇が付与されます。
その後も条件を満たせば勤続年数に応じて日数が増え、6年6か月以上では20日になります。
ここでまず知っておきたいのは、
年間休日と有給休暇は別のもの
ということです。
求人票を見るときは、年間休日だけでなく有給休暇についても確認してみてください。
退職金や福利厚生も確認してみよう
給与以外の条件も確認しておきたいところです。
たとえば、
- 退職金制度
- 住宅手当
- 通勤手当
- 社員寮
- 食事補助
- 資格取得支援
- 駐車場
などです。
特に県外へ就職して一人暮らしをする場合、社員寮や住宅手当の有無によって毎月必要なお金はかなり変わります。
車で通勤する場合も、「マイカー通勤可」だけではなく、駐車場代を誰が負担するのか確認してみてください。
私自身、交通費の支給があってもガソリン代などの負担を感じることがありました。
毎日の昼食代なども含め、働き始めると求人票の給料だけからは見えにくい支出が出てきます。
その給料で一人暮らしできる?実際に計算してみよう
ここからが、この記事で一番やってみてほしいことです。
自分が気になっている会社の給料で、一人暮らしできるか実際に計算してみてください。
簡単な例を作ってみます。
手取りを月15万円と仮定します。
| 支出 | 月額 |
| 家賃+駐車場 | 50,000円 |
| 電気・水道・ガス | 15,000円 |
| スマホ+インターネット | 15,000円 |
| 車のローン | 20,000円 |
| 固定費合計 | 100,000円 |
※これは平均的な一人暮らしの生活費ではなく、計算方法をイメージするための簡単なモデルです。
手取り15万円なら、
150,000円 − 100,000円 = 残り50,000円
です。
「5万円も残るなら大丈夫じゃない?」
と思うかもしれません。
でも、まだ食費を入れていません。
さらに、
- ガソリン代
- 自動車保険
- 日用品
- 医療費
- 衣服
- 交際費
- 趣味
- 貯金
なども必要になります。
そう考えると、5万円の見え方が少し変わってきませんか?
私自身、実際に支払いをしてみると手元に5万円も残らず、「この状態で一人暮らしするのは難しい」と感じました。
だから実家を出るまでにも時間がかかりました。

ちなみに、手取り15万円は沖縄県の市町村公務員の初級一般職の初任給くらいです。
県外に就職するなら「その地域で生活するお金」を調べよう
県外への就職を考えているなら、さらに重要です。
たとえば求人票に、
月給25万円
と書かれていたとしても、その数字だけで「給料が高い」と判断することはできません。
その地域の家賃はいくらなのか。
車は必要なのか。
公共交通機関を利用するなら、会社から通勤費はどこまで出るのか。
住宅手当はあるのか。
社員寮はあるのか。
さらに県外へ出るなら、引っ越しや賃貸契約などで最初にまとまったお金が必要になる可能性もあります。
まず、自分が住みたい地域の家賃を実際に調べてみてください。
そして光熱費、通信費、食費、交通費などを足していきます。
「この会社からもらえる給料で、この地域に住めるかな?」
ここまで考えてみると、求人票の見え方も変わってくると思います。
社会人2年目は住民税にも注意
もう一つ、生活費を計算するときに知っておいてほしいのが住民税です。
住民税は前年の所得をもとに計算されます。
そのため、新卒1年目は前年に一定の所得がなければ原則として住民税がかからず、2年目の6月から給与天引きが始まるケースがあります。
つまり、
「1年目の手取りでギリギリ生活できるから大丈夫」
と考えていると、2年目になって給与から引かれるお金が増える可能性があります。
もちろん、学生時代の収入などによって状況は異なります。
それでも、一人暮らしの生活費を考えるなら、1年目だけではなく2年目以降も生活できそうかという視点は持っておいてほしいと思います。
自分が検討している求人票で計算してみよう
ここまで読んだら、実際に気になっている求人票を一つ用意してみてください。
1.月給から手取りの目安を出す
たとえば月給20万円なら、
200,000円 × 0.8 = 約160,000円
まずはこれを簡易的な手取りの目安にします。
※実際の手取り額ではありません。
2.住みたい地域の家賃を調べる
県外就職なら、実際に就職を考えている地域の賃貸物件を検索してみると分かりやすいと思います。
3.毎月必要なお金を書き出す
- 家賃
- 光熱費
- 通信費
- 食費
- 交通費・車
- 日用品
- 保険
- 趣味・交際費
- 貯金
自分に必要なものを追加してください。
4.会社から出るお金も確認する
住宅手当や通勤手当、社員寮などがあるなら、その条件も確認します。
5.最後に残る金額を計算する
そして、
「毎月いくら残る?」
を計算してみてください。
その残った金額で、
自分が想像していた社会人生活ができそうですか?
ここまでやって初めて、求人票に書かれている「月給○万円」という数字が、自分の生活とつながってくると思います。
税金や社会保険は、若いうちに少しずつ知っておいてほしい
社会人になると、税金や社会保険など、学生時代にはあまり意識していなかったお金が関係してきます。
所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険。
最初からすべて詳しく理解する必要はないと思います。
ただ、
「給料から何が引かれているんだろう?」
というところからでも、少しずつ調べてみてください。
20歳になると公的年金制度との関係がありますし、会社員として厚生年金に加入する場合もあります。
40歳になると、医療保険に加入している人は介護保険との関係も出てきます。
さらに60歳以降の働き方についても、会社の定年や再雇用制度などによって条件が変わります。
社会人生活は、最初の給料だけを考えれば終わりではありません。
私はもっと早く知っておきたかった
私は最初、額面の給料をそのままもらえると思っていました。
ボーナスも2か月分くらいはもらえると思っていました。
実際に社会人になって初めて、「思っていたのと違う」と気づきました。
実家暮らしだったことで多少融通が利いたので貯金することはできましたが、生活していくには思っていた以上にお金が必要でした。
その後、20代、30代は転職や資格取得などにも取り組んできました。
だから、こういうことは若いうちに、できれば社会人になる前から少しずつ勉強してほしいと思っています。
まとめ|「月給はいくら?」の先まで考えてみてほしい
この記事を読んで、税金や社会保険の制度を全部覚える必要はありません。
まず求人票を見たときに、
「この金額が全部もらえるわけじゃないんだな」
と気づくだけでもいいと思います。
そこから、
「実際の手取りはいくらくらい?」
「ボーナスはいくら?」
「休みはどのくらい?」
「家賃はいくら?」
「県外に引っ越すならいくら必要?」
「2年目になっても生活できそう?」
「この給料で一人暮らしできる?」
と、一つずつ調べてみてください。
月給はいくらなのかではなく、その給料で自分はどんな生活ができるのか。
実際に数字にしてみると、見えてくるものがあります。
私自身、社会人になってから現実を知りました。
だからこそ、これから社会人になる人には、できるだけ早いうちに一度、自分の将来の生活を計算してみてほしいと思っています。

お金の話は、親や学校は教えてくれないことが多いです。
社会に出て学ぶ事ですが、先に知っていればより勉強頑張ったのになーとか後悔したりしますわ!
参考・出典
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「初任給の手取り額はいくら?給与明細の見方と社会人の1年目から始めたい家計管理の基本」
- 厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 国税庁「給与所得」「給与・賞与の源泉徴収」に関する情報
※税金・社会保険料や手取り額は、収入、年齢、加入制度、扶養状況などによって異なります。本記事の「額面×0.8」や生活費は、将来の生活を考えるための簡易的な目安・モデルです。実際の金額については勤務先や各制度の公式情報をご確認ください。

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